研究概要はどのくらい詳しく書くか

製薬会社の就活では詳しめに書けばよい

特に、大手の製薬会社の研究職を志望する場合、一般的な就活とは状況が違うので注意してください。製薬業界以外であれば、「人事担当者が知りたいのは、研究内容よりもあなた自身である。したがって、研究の中身よりもあなた自身の人格が伝わるように書くべきだ」とアドバイスされるかもしれません。しかし、製薬会社(特に大手の研究職)であれば、むしろ正反対です。大手の製薬会社研究職の選考ではどちらかというと、研究内容の専門性が初めの足きりの段階で作用します(不要な研究専攻の学生を一気に落とす)。そして、その後の面接で人物評価と研究能力の審査が行われる。という順番です。研究内容を企業はとても重視しています

いくつかの理由があると思いますが、第一に考えられるのは、そもそもバイオ系学生の数に対して募集人数が圧倒的に少ないことです。そのため、エントリーシートでいくらでも取り繕える当人の性格とか志望動機といった抽象的なものよりも、初めに専門分野という比較的明確な指標でばっさり切ってしまって、その後に面接で学生の雰囲気や研究力を確認する方が確実で効率的なのかもしれません。

また、大手製薬会社が極めて研究開発を重視していることも影響していると思います。求める研究をやってくれそうな人がいれば採用するという、比較的わかりやすい基準です。ノリがいいとか話がうまいとかイケメンや美人で感じがいい学生は就活全般でアドバンテージがありますが、こと製薬研究職に関しては、他の日本型企業のように「気に入った学生を採用して入社後に教育すればよい」なんてアイデアはあまりありません。そういったスキルや外見はもちろん大事なんですが、それよりも研究能力を相対的に重視しています。


具体的な書き方と注意点

であるとすれば、研究概要はどれくらい詳しく書けばよいでしょうか?

私の感覚では、学振に応募するくらいがよいと思います。つまり、プロ相手のつもりでよいのです。製薬研究職、特に大手や研究を重視している会社であればあるほど、エントリーシートの「研究概要」は文系人事ではなくて、研究の解る人がちゃんと見てくれています。そもそも研究職採用の人事担当者が、研究職出身の人であることが非常に多いです。説明会で「面接で研究発表する際にどのくらい詳しく話せばよいか?」と私が尋ねた際は、人事担当者は「学会で発表するくらいで」とおっしゃっていました。私は個人的には、学会発表よりは簡単に話す方が無難(学会発表のアブストよりはレベルを落として研究概要を書く方が無難)とは思いますが、少なくとも研究が分からない人事の人間がエントリーシートの研究概要を読んで学生をスクリーニングにかけているなんてことはありません(もちろんあまりに支離滅裂だとか字が汚いとかだと、ちゃんと読まれないかもしれませんが…)。

注意すべきこととして、製薬会社研究職ではやはり研究の着眼点がアカデミア研究者とは異なっていることは挙げられます。薬学研究科以外の出身者は少し気を付けたほうがいいかもしれません。例えばシグナル経路が関係する研究を行っていたら、その経路に関わるタンパクが創薬標的としてはどうであるとか、そのシグナル経路がヒトの病気とどうかかわっているか、程度は気にした方がよいです。元々採用する側、つまり製薬会社側は、あなたの研究の内容自体にはほとんど興味なくって、あなたの研究技術や知識が「いかに自分たちの製薬に貢献するか」を考えています。なので、あなたが研究で明らかにしたことを示すのも大事ですが、それよりは「あなたが身につけた技能が会社での研究に貢献する」ことを示す方が大事です。


まとめ:
研究概要は研究者(生物・医歯薬系の研究者)に伝わるレベルで書けばよい。
ただし相手の興味は、アカデミア研究者とは異なっているので注意。


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