製薬会社の難易度や倍率について

製薬会社への就職(特に研究職)は、高収入が得られる+健康への貢献というやりがいが魅力的なためか、非常に学生への人気が高いです。大手製薬企業の研究職であれば、エントリーシート提出の段階での倍率は数百から千倍だと言われています。(「四季報」などでMR等も含めた全体の倍率はチェックすることもできます)

ただ、これを確率の問題と考えるのは正しくありません。たとえば、倍率が数百倍だからといって数百のESを書けば大体1社内定をもらえる、なんてことはありません。そうではなく、面接でチェックされる性格の相性や、大学研究室での専門内容が重要です。

もし大学院での研究内容が、(ほんの一例ですが)in vivo薬物動態だとか、創薬のための有機合成だとか、免疫チェックポイント制御分子(=いま製薬業界で流行している)だったりしたら、これらはかなり歓迎される専門性です。ある程度の人柄チェックと学歴フィルターをパスしたら内定が出ます。そういった学生はたいてい他の会社からも内定がもらえますが、一方で大学院での専門性が製薬企業から求められないものであれば、製薬研究職の内定得られる確率はかなり低いです。(学歴や面接の巧さでどれくらいカバーできるかはわかりません。学部生>修士課程学生、ならままあるかもしれませんが。)

極力競争を避けるために、「研究職募集」の中で希望分野を変えることは、ある程度は有用かもしれません。日本の大学院(アカデミア)での研究は製薬研究と比べた場合、明らかに 「in vitroの、特定遺伝子の性質を調べる研究」が過剰です。大学院生がそこで研究している対象遺伝子がヒトの疾患に関連していない場合は、製薬会社の就職においてかなり不利です。対象遺伝子や分子の研究に何か特殊な技術を用いていれば、その技術が歓迎される場合もありますが、やはり製薬研究職は人気で、多くの人が目指すので狭き門になっています。

そして希望者が殺到する対象は、製薬会社による研究職募集カテゴリでいう「薬理研究」だとか「研究職生物系」になってしまいますin vitro生物学者に有機合成や製剤研究はできませんから)。平凡な分子生物学を培養細胞レベルでのみ行ってきた学生は、高偏差値大学であっても結構研究職就活は厳しいです。「生物系」の研究職に絞れば大手で倍率1000倍超えると思います

私ができるお勧めとしては、会社が募集を出している場合に限りますが、「CMC研究」(など)で応募することです。一般的な化合物医薬品を作っている製薬会社であれば、化学や工学の専門家のみを欲しがるでしょうが、一方でバイオ医薬品を生産するには「生物学」の知識が明らかに重要です。創薬プロセスで言えば基礎研究(薬理研究など)よりは下流にあたるので、アカデミアでよくある研究のように「タネをみつける」楽しさは薄れるかもしれません。それが一因かわかりませんが、会社説明会等で従業員の方からは、「就活生からの人気はない」としばしばお話を聞きました。

バイオ医薬品CMCであれば、工学系と生物系学生を主に募集しています。細胞株でタンパク(抗体など)の大量発現細胞を作製した経験があったりしたら、修士課程学生がCMCに興味を持ったというアピールにはなるかもしれません。実際にそういった技術は、業務に役立つはずです。チェックしてみてはどうでしょう。

また、「転職者サイト」には登録しておくのはお勧めです。新卒採用のように募集人材に曖昧性がないので、各企業がどのような専門性や研究スキルを持つ人材を求めるかはっきりします。それを読んで、自分が求められている技術(の基礎)を持っていることをアピールすると、他の学生と差がついていいかもしれません。

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