大学院での研究分野の一致は就活でどのくらい求められるか

研究分野が製薬会社が求めるものと、一致していれば一致しているほど内定率は高まります。「企業側から学生に声がかかる」「学生が応募すれば特別選考プロセスに乗せてくれる」「通常選考でちょっとだけ有利になる」などの異なるレベルがあります。博士課程は研究分野に基づく選考がほとんど全てですが、修士の学生であっても、ポテンシャル・学歴に加え、研究分野は重要な要素です。修士課程学生であれば博士課程学生ほど明白に企業からアプローチされることはないかもしれませんが、考え方は同じだと思うのでぜひ読んでいってください。


(1)「企業側から学生に声がかかるレベル」

このレベルだったら、研究室教授経由や学会でコンタクトをお願いされたりされます。製薬関連の大企業が博士課程を採用する際はこういうパターンが多いです。私の周りの印象だと、3-6割かと思います。会社セミナーとかは参加するように求められている(みたい)でした。最低限のコミュニケーション力を持っている博士課程学生なら内定するようです。特に同世代と比べて優秀か否かは関係なく、ほぼ研究の専門性「のみ」で採用されるパターンです。

例:
ある分子(免疫系レセプター)の構造を解析できる学生。
ある細胞(iPS細胞)の立体培養の技術を持っている学生。

などです。運よく会社がほしい技術を持ち、ちょうどそのタイミングで修了する博士学生はほとんど苦労せずに製薬大手に就職できます。


(2)「学生が応募すれば特別選考プロセスに乗せてくれる」

このレベルの専門性を持つ博士学生は、少しだけ苦労します。多くの選考プロセスでは、人事面接の次に研究所面接という順ですが、初めの人事面接での審査が相当にゆるくなります、またはスキップさせてもらえたりします。(多分人事は研究を判断できないから、よっぽど変な学生じゃない限り研究所の人間に判断をゆだねるのでしょう。)

例:
免疫抑制分子(PD1など)のシグナル経路研究を(動物で)行う技術を持つ学生。
あるウイルス(HCV)に対する細胞免疫を研究していた学生。

などです。研究対象の遺伝子(分子)が一致していなくても、疾患領域が重複していたらこのパターンです。どの会社もある程度似たような重点領域を掲げていることが多いので、このパターンで一致したら複数の会社で選考有利に働くことが多いと思います。すぐには内定貰えないから落ちたりもするけれど、最終的に中堅以上の会社の内定を得ていた人が多かったです。(*ただし、がん領域のようにあまりにアカデミア研究者が多い分野では就活生過多なので競争は激しいままだと思われます。)


(3)「通常選考だけどちょっと有利になる程度の専門性一致」

該当するのは、比較的広い範囲でのざっくりとした専門性の一致です。例えば大学院で「神経系の研究」「がんの研究」「免疫の研究」をやってきたことも製薬会社の研究職への就活ではプラスに働きます。これらは比較的需要の大きい研究分野です。修士課程であれば学歴(大学偏差値)の影響が大きいですが、博士であれば学歴よりも研究での専門性・技術が重視されます。平凡ですが、「in vivo」の研究技術を持っていればそれもプラス効果があります。in vivoの代謝研究などであればかなり有利。逆に薬剤のスクリーニング経験などin vitroの技術で有利に働く生物系学生もいます。「薬剤スクリーニング」でなくても、何らかの生命工学的な特殊技術を持っていれば、製薬会社研究員に注目されたりします。(「珍しい技術を持っているネ!この技術をウチの創薬スクリーニング系に応用できないだろうか…(思案)」みたいに。)

これくらいの研究分野一致の学生は、博士でも修士でも選考の対象には入りますが、まさに本人が優秀であることを示さなくてはなりません。結構大変です。コミュニケ―ション力・プレゼン力・基礎学力があり、醸し出す雰囲気が会社のそれとマッチしていることも重要です。博士課程修了で研究の専門性の一致なく製薬大手に就職できた人はほとんど聞いたことがありません。中堅以下であれば可能性はあります(ゼロではないという程度の可能性)。修士課程であっても、製薬大手は会社数自体がとても限られているので、高偏差値大学のなかでも特に目立って優秀に見える人が内定をもらって就職していました。


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